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ビジネス特許におけるライセンス契約について教えてください。

A1.ビジネス特許の意義
 一般に「ビジネス特許」とは、インターネットなどの情報技術(IT)を利用したビジネスの新しい仕組みに与えられた特許を言います。なお、ITを利用しないビジネスの新しい仕組みは、単なる「人為的取決め」に該当するのが通例であり、そのような場合には特許は成立しません。ただし、ビジネス特許であっても、特許であることには変わりはなく、通常通り特許のライセンス契約を行うことになります。

2.実施権の選択
 特許に関する実施権には通常実施権と専用実施権の2種類があり(特許法77条、78条)、このいずれかを選択することになります。
 通常実施権は、特許権や専用実施権の存在に拘わらず、ライセンシー(実施権者)が特許発明を自由に実施できる権利です。但し、第三者の侵害行為を差止めるような法的措置は採れないと考えられています。
一方、専用実施権は、ライセンシーのみが特許発明を独占的に実施できる権利です。したがって、第三者の侵害行為を差止める法的措置を採ることもできます。

3.実施権の交渉
 ライセンス契約に先だって、契約希望者と特許権者の交渉がなされますが、特許権の所有者が複数人の場合は、特許権者全員の同意が必要となります(特許法第73条第3項)。
ライセンス交渉においては、実施期間、実施地域、実施内容などを特定してライセンス料を定めることになります。例えば、実施期間は3年、実施地域を関西地区に限定して実施を認めるなどの制約を設けることができます。また、第1サーバと第2サーバの協働によって実現するビジネスであって、各サーバに独占権が発生している特許のような場合には、実施内容として、第1サーバの実施だけを認めることも可能です。
 ライセンス料の決め方にも色々あり、一括払いのライセンス料だけでなく、実施実績に応じて支払うランニングロイヤリティーや、これにイニシャルロイヤリティーを組み合わせる方法などがあります。
 いずれにしても、具体的金額は、そのビジネス特許の持っている経済的価値によって決まることになります。他の代替ビジネスがおよそ考えられず、大きな事業収益が見込めるような場合は相当に高額なものとなるでしょう。

4.実施権の効力の発生
 通常実施権の場合、交渉成立後、契約内容に沿って効力が発生します。但し、通常実施権の登録を行っておく方が良いと言われています。なぜなら、特許権が第三者に移転された場合でも、登録を行っていれば新たな特許権者に対抗できるからです(特許法第99条第1項)。
 一方、専用実施権の場合は、契約成立だけでは効力が発生せず、専用実施権が登録されて始めて効力が発生します(特許法第98条第1項第2号)。

5.その他
(1) ビジネス特許の成立に際しは、先行事例をもとに新規性や進歩性の判断がされたはずです。しかし、ビジネス特許の場合、新規性や進歩性の判断に必要とされる先行事例の蓄積が充分とは言えないのが現状であり、したがって、当該ビジネス特許に無効理由がある可能性も考慮しておくべきです。万一、特許が無効となると、その特許権は始めから存在しなかったものとして扱われますから(特許法第125条)、契約当事者は、当該ビジネス特許の有効性を慎重に検討すると共に、無効になった場合も想定して契約内容を規定しておく必要があります。

(2) ライセンシーが実施を開始したところ、正当権限のない第三者による実施行為を発見することがあります。この場合、専用実施権者であれば差止請求などの法的措置を採ることができますが、通常実施権者は、一般に、そのような法的措置をとることができないと言われています。したがって、ライセンス契約時に、「侵害行為が発見された場合には、特許権者がどのように対処するか」を定めた条項を設けておく方が良いと言えます。

関連URL 
 特許庁「ビジネス方法の特許に関するQ&A」  http://www.jpo.go.jp/toiawase/faq/tt1210-037_qanda.htm
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